【コラム】裁判と調停の違い
【裁判と調停の違いについて】
法律トラブルの解決方法として、「裁判」と「調停」はよく知られていますが、その違いについてご存じでしょうか?
ここでは、両者の違いについて分かりやすくご説明いたします。
■ 調停とは(話し合いによる解決)
調停は、裁判所を通じて行う「話し合い」の場です。
あくまで話し合いによって、合意を目指す手続きですので、「どちらが正しい」ということなどを認定してもらうことはできません。
そのため、お互いに歩み寄りの精神がなければ調停を成立させることは極めて困難です。
手続的には、裁判官とともに選ばれた調停委員(有識者、学識経験者)が間に入り、当事者同士の合意による解決を目指します。
ちなみに、誤解されやすいポイントとしては、調停委員は裁判官ではないということです。中には弁護士の調停委員がいることもありますが、数としてはそこまで多くありません。
基本的には調停委員によって進められますが、上記のとおり調停委員は裁判官ではなく法的な判断はできないため、法的な主張が当事者から出れば、その都度控えている裁判官と評議をするということになっています。
- 手続きは非公開で行われ、プライバシーも守られます。
- 双方の意見を丁寧に聴きながら、柔軟な解決策を探ることが可能です。
- 離婚や相続、近隣トラブルなど、継続的な関係がある場合に適しています。
- 裁判に比べて短期間で終了する傾向にあります(目安:6か月~1年程度)
合意が成立すれば、「調停調書」が作成され、判決と同じ効力を持ちます。
■ 裁判とは(法的判断による解決)
裁判は、当事者がそれぞれの主張・証拠を出し合い、最終的に裁判官が法律に基づいて判断を下す手続きです。
- 原則として公開の場で行われます。
- 判決には強制力があり、相手が従わない場合には強制執行も可能です。
- 話し合いが難しいケースや、相手方が協議に応じない場合に適しています。
- 調停と比べて長期化する傾向があります(目安:1年以上~)
■ 裁判と調停の違いを表で比較
比較項目 | 調停 | 裁判 |
---|---|---|
解決方法 | 話し合い・合意 | 判決 |
手続に参加する者 | 申立人、相手方、調停委員+裁判官 | 原告、被告、裁判官(1名~3名) |
手続き | 非公開・柔軟 | 公開・形式的・厳格 |
強制力 | 合意が必要 | 判決に従う義務あり |
手数料等 | 申立費用:1200円 郵券などを含めても3000円程度 | 費用:請求額に応じ、数千円~数万円+郵券代 |
主な利用場面 | 離婚・相続・ご近所トラブルなど話し合いによって解決の余地があるもの | 話し合いの余地がないもの、強制執行を行う必要があるもの |
弁護士費用の相場 | 着手金:20~40万円 報酬金:達成具合に応じて変動 | 着手金:30~50万円程度 報酬金:達成具合に応じて変動 |
期間の目安 | 半年~1年程度 | 1年~(長いもので2、3年) |
■ どちらの手続きが適しているのか
どちらの手続きにもメリット・デメリットがあります。
相手方との関係性、解決までのスピード、費用、プライバシーなどを踏まえ、最も納得のいく方法を選ぶことが大切です。
なお、離婚の場合は、いきなり離婚裁判というものができるわけではなく、調停を行い「不調」(調停がまとまらないこと)という結果を得る必要があります(これを調停前置といいます。)。
そのため、相手方に離婚事由があったとしても、直ちに裁判を起こせるわけではなく、まずは調停からはじめなければならないことに注意する必要があります。